edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

日経、来年の電子新聞創刊を宣言

 10月12日(月)の日経朝刊の21面を1面丸ごと使い「日経、電子新聞を来年創刊へ」の特集紙面が掲載された。日経が電子新聞創刊を大々的に公言したのは初めてではないか。ウェブではこちらで同じ内容が読める(⇒日経電子版 広報部|「日本経済新聞 電子版」のサービス・機能・購読料金等を紹介。キャンペーン・イベント情報を公開
 月額料金や紙の新聞とセット購読の場合の料金、申し込み方法はネット経由など直接契約オンリーなのかそれとも既存新聞販売店も使うのか、決済方法はどうするのかといったファクトの部分はまだ触れられておらず、開始時期もまだ「2010年内」とのことで明確になっていない。CEATECのシャープブースで展示されたマルチデバイスでの利用デモについてもノータッチ。
 特集紙面で説明されている「電子新聞の特徴」については1月に業界誌のfactaに出た構想と比べて目新しいものは少ないが、日経の公式発表であるので概要をメモ。

<電子新聞の特徴>

  • 「即時性」…従来の朝刊・夕刊といった時間の枠にとらわれず、ニュースを常に最新の状態で提供。
  • 「機能性」…スペースの制限がなくなるため、記者会見の一問一答や新製品の詳細情報なども収容。また、電子新聞の編集者が選んだ国内外の信頼できるメディアの記事や論評も掲載。読者がネットを探し回らなくても重要なニュースや解説を一覧できる。
  • 「MY日経」…読者一人一人のニーズに合わせたカスタマイズ。閲覧履歴からその人に合う記事を自動的に選びだしたり、必要な記事を保存しておける機能。
  • ウェブサイト「NIKKEI NET」で出している無料部分はそのまま継続。有料会員はPC・携帯・テレビなど様々な媒体で使え、すべての情報を閲覧できる。登録会員向けや有料会員向けに付加価値のついた記事もそろえる。

<電子新聞の創刊にあたっての岡部直明主幹のメッセージ>

  • ジャーナリズムは新たな挑戦の時。ネット時代こそ情報の質が問われる。混迷の時代こそジャーナリズムは変化を後追いするだけでなく、確かな軸を提供する責務がある。
  • スクープこそジャーナリズムの核。明日分かることを今日伝えるのではなく、戦後史など歴史に埋もれた真実を掘り出す調査報道や、時代の潮流変化を先取りする企業再編には大きな価値がある。電子新聞にもそんなスクープが載る時代が来る。
  • 電子新聞では解説記事こそがメディアの力を示す。スクープに肉薄するからこそ解説に深みが出る。映画でいうなら黒澤明のマルチカメラ(多角的視点)と小津安二郎のローアングル(低い視角)。そんな解説記事をまとめられる記者をどれだけ育て、生かせるかがメディアの信頼性につながる。字数の制約が少ない電子新聞はそんな解説記事の宝庫になる。(以上、2009/10/12 日本経済新聞21面より)

 日経の現場が一番こだわってるのは「明日の発表を半日早く伝える」ことじゃないか、とツッコミを入れたくならないでもないが、理念としては調査報道や深みのある解説記事に価値を置こうという姿勢なのだろう。どんな職場でも理想と現実のギャップはあるだろうし。