edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

全国紙サイトは午前3時頃が要注目

 ほとんどの人にとってはどうでもいいことだが、大手新聞社サイトは午前2時半から3時頃が要注目である。たいていの人は寝ている時間帯だが、この時間は日経を除く全国紙が各社がいわゆる「独自ダネ」をウェブサイトにアップする時間だからだ。
 「独自ダネ」というのは新聞およびテレビ局の報道部門ではわりと一般的な用語で、「抜きネタ」ともいったりする(決して下ネタのことではない)。簡単に言うと、取材によって他社よりも先行して事件捜査や行政の動き、政府・企業の人事や合併交渉などニュースについて新たな展開をつかんだことをいう。
 代表的な例は、「警視庁捜査一課は○○日、△△を××の疑いで逮捕する方針を固めた」や「政府は○○日、〜について〜する方針を固めた」という表現。この「方針を固めた」というのが他社よりも先行したことを示している。ほかにも「○○新聞社の取材で○○であることがわかった」という表現や「検討に入った」「明らかになった」という表現もある。パッと見わかりにくいが、何日か続けて複数の新聞を読んでいると、なんとなくわかってくるはずだ。スポーツ紙の「誰々と誰々が熱愛関係にあることが本紙の取材で明らかになった」というのももちろん範疇に入る。
 なお、記者会見や囲み取材で「〜を表明した」という場合や、「警視庁捜査一課は〜を逮捕したことを発表した」は、各社並んで聞いていることなので独自ダネにはならない。
 ネタを抜かれた他社は、午前中に「〜を逮捕する方針であることが○○日、わかった」と淡々とした表現でウェブに記事を掲載し、夕刊の紙面に掲載する場合が多い(これを「追いかけ」と言ったりする)。また、他社の独自ダネを取材して確認が取れなかった場合などは記事にしないこともある*1
 以下が実際に独自ダネが上がっている様子である。YOMIURI ONLINEの9/20 3:06のスクリーンショット。赤線部分が午前3時直後に更新されている「独自ダネ」である。

 asahi.comの9/20 3:05のスクリーンショットはこんな感じ。

 同じくasahi.comの前日9/19はこんな感じ。「強制捜査へ」や「捜索へ」のように“へ”がついているのがポイント。

 毎日は少し早く、午前2時半ごろが独自ダネ更新のようだ。

 なぜこんなたいていの人は寝ているような時間に掲載するかだが、あまり早く掲載してしまうと他社がそれをキャッチして動き、翌日の朝刊に間に合ってしまうことを防ぐためだと思われる。午前2時半や3時にウェブにアップし抜かれたことを知られたとしても、紙面の締め切り時間は過ぎているので朝刊に間に合うことは100%ない。新聞社の記者たちははなんだかんだ言っても「紙面で他社に勝つ」ことが目標なのであろう。
 ただ、産経は「ウェブ・パーフェクト」を掲げるだけあり、独自ダネであってもあまり掲載時間を気にしていないような印象がある。逆に日経は「新聞配達時間より遅くする」ことを堅持しているようで、独自ダネについては午前6時〜7時ごろにならないとウェブサイトに掲載しない*2。また、地方紙はたいていウェブサイトでも共同通信のニュース配信を受けているので、午前2時から3時頃に全国紙には載っていない独自ダネが見られることもあったりする。
 夜更かしした日は、午前3時ごろ新聞社サイトを訪問してみれば、そこで記者たちの取材の成果の結晶が垣間見れるはずだ。

*1:最近では衆院選公示日直前に毎日新聞が「幸福実現党が全面撤退へ」という抜きネタを出し、ヤフートピックスにも掲載され、朝になって数社が追いかけをしたが、午後の幸福実現党の会見で「一部の選挙区から撤退し候補者を絞る」ことであったことがあった。いわゆる「ガセネタ」である

*2:来年創刊予定の「日経電子新聞」では電子版の方が早くなるケースもありそうだが