新聞協会賞にホームアドバンテージはあるか?(過去の受賞社一覧)
いよいよ9月2日の選考委員会で発表される2009年の新聞協会賞。編集ニュース部門の候補作は先日のエントリで紹介したが、新聞業界にとっては年に1度の一大イベントであり、関心を持っている業界関係者は多い。
で、この新聞協会賞はその年の新聞大会で表彰が行われる。新聞大会とは、全国の新聞社のトップが集まって講演会やシンポジウムが行われるイベントであるが、近年業界関係者の間では「受賞する社と、新聞大会の開催地との間に相関があるのでは」というゴシップが流れることがあるという。
果たしてその噂は本当なのか。過去の新聞協会賞と新聞大会の開催地を一覧してみることにした。
なお、データは日本新聞協会刊行の「日本新聞年鑑'08-'09」から抜粋した。編集部門の「ニュース」「写真・映像」「企画」の区別は日本新聞年鑑では記述されていないが、受賞作品の内容から区分けした(1985年以前については区別を省略)。赤文字で記したのが大会の開催地と受賞社の本社所在地が一致するものである。
年 | 新聞大会開催地 | 編集(ニュース) | 編集(写真・映像) | 編集(企画) | 経営・業務 | 技術 |
---|---|---|---|---|---|---|
2008年 | 札幌 | 毎日 | フジテレビ | 新潟 | 信濃毎日 | |
2007年 | 長野 | 北日本 | 毎日 | 信濃毎日、NHK | 東奥、静岡 | 西日本 |
2006年 | 岡山 | 日経 | 毎日 | 京都、西日本 | 朝日 | |
2005年 | 神戸 | 朝日 | 朝日 | 神戸、琉球 | 朝日、読売、信濃毎日 | |
2004年 | 富山 | 日経 | NHK | 北海道、熊本日日、新潟 | ||
2003年 | 熊本 | 毎日 | 日経、熊本日日 | |||
2002年 | 名古屋 | 毎日 | 共同(2件) | 朝日、中日、中国、フジテレビ | 信濃毎日、中日 | |
2001年 | 福岡 | 毎日 | 産経 | 高知 | 日経 | |
2000年 | 横浜 | 時事 | 共同 | 毎日 | 読売 | |
1999年 | 宇都宮 | 日経、産経、朝日 | 読売 | 中国、信濃毎日 | 中日、沖縄 | |
1998年 | 広島 | 日経、読売 | 琉球、朝日 | 読売、西日本 | ||
1997年 | 仙台 | 産経 | 共同 | 共同、河北、西日本、朝日放送、熊本日日、東京 | 毎日 | |
1996年 | 大分・別府 | 日経 | 西日本 | 産経、北海道、沖縄タイムズ、長野放送、河北、毎日、高知 | 河北 | 日経 |
1995年 | 高知 | 日経 | 山梨日日 | 中国、京都・神戸(合同企画)、山陽、信越放送、東京、朝日 | 南日本 | |
1994年 | 京都 | 産経 | 中日 | 読売、日経、京都、朝日放送、河北、北海道 | ||
1993年 | 新潟 | 朝日、産経 | 共同 | 共同、熊本日日、信越放送、産経、西日本 | 静岡 | |
1992年 | 松山 | 毎日 | 読売 | 日経、河北、NHK、東京、朝日 | 信濃毎日、中国 | 朝日 |
1991年 | 札幌 | 日経 | 読売 | 西日本、北海道、日本テレビ、中日 | 河北、西日本 | 毎日 |
1990年 | 金沢 | 産経 | 長崎 | 中国、岩手、NHK | 中日、京都 | 山梨日日 |
1989年 | 岡山 | 毎日 | 新潟、NHK | 読売 | ||
1988年 | 東京 | 朝日 | 共同 | 読売、南日本、NHK | 熊本日日 | 共同 |
1987年 | 前橋 | 朝日 | 毎日、山陽 | 中国 | 朝日、読売 | |
1986年 | 大阪 | 毎日 | 中国、読売、北海道 | 中国 | 朝日 | |
1985年 | 静岡 | フジテレビ | 中国、熊本日日、RKB毎日放送、信濃毎日 |
1985年以前は現在の題号とは違う新聞名もあるが、日本新聞年鑑の表記に依った。また「団体表彰」とあるのは特定の社に対してではなく、各社が集まった研究会などへの表彰を示す。
年 | 新聞大会開催地 | 編集部門 | 経営・業務部門 | 技術部門 |
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1984年 | 鹿児島 | 朝日、共同、南日本、TBS | 読売、北国、共同 | |
1983年 | 長野 | 共同、サンケイ、河北、東京 | 熊本日日 | 時事 |
1982年 | 盛岡 | 日経、NHK | 共同 | |
1981年 | 神戸 | 毎日、山陽、西日本、TBS | 朝日 | |
1980年 | 広島 | 毎日、日経、南日本 | 信濃毎日 | 信濃毎日 |
1979年 | 那覇 | 毎日、北国、西日本 | 共同 | |
1978年 | 仙台 | 共同、高知、朝日、読売、琉球 | 日経 | |
1977年 | 福岡 | 朝日、読売、北海道、日経、南日本、NHK | 山形 | サンケイ、日経、中日 |
1976年 | 東京 | サンケイ、熊本日日 | 静岡、共同 | |
1975年 | 大阪 | サンケイ | 共同 | |
1974年 | 秋田 | 読売、新潟、秋田魁 | 日経 | 日経 |
1973年 | 岡山 | 河北 | 日経 | |
1972年 | 札幌 | 新潟 | 読売 | |
1971年 | 熊本 | 共同、日経、西日本、福井 | 西日本 | |
1970年 | 東京 | 北日本、中部日本*1、北国 | 日経 | |
1969年 | 徳島 | 日経、毎日、北日本、NHK | 佐賀 | 共同 |
1968年 | 新潟 | 共同、秋田魁、朝日 | ||
1967年 | 東京 | 北海道、毎日、京都 | 団体表彰 | |
1966年 | 名古屋・岐阜 | 山陽、読売、中部日本 | 共同 | |
1965年 | 大阪 | 毎日、中国、神戸、日本テレビ | 日経 | |
1964年 | 東京 | 新潟、毎日、信濃毎日 | 中部日本、沖縄タイムズ | |
1963年 | 金沢・富山 | サンケイ、東奥、毎日 | 日経 | |
1962年 | 福岡・小倉 | 毎日・RKB毎日放送(合同企画)、朝日、日経、西日本 | 神戸、山梨日日 | 団体表彰 |
1961年 | 東京 | 北海道、中部日本、毎日 | 信濃毎日 | 読売 |
1960年 | 京都 | 西日本、山陽、朝日 | 朝日、京都 | |
1959年 | 東京 | 中国、西日本 | 朝日、団体表彰 | |
1958年 | 仙台 | 朝日、中部日本 | ジャパンタイムズ、神戸 | 読売、北海道 |
1957年 | 大阪 | 朝日、毎日、京都 | 毎日、中部日本、朝日 | |
1956年 | 東京 | |||
1955年 | 広島 | |||
1954年 | 札幌 | |||
1953年 | 東京 | |||
1952年 | 福岡 | |||
1951年 | 名古屋 | |||
1950年 | 東京 | |||
1949年 | 大阪 | |||
1948年 | 東京 |
こうして並べてみると、年によって受賞作品数にかなりのばらつきがあることがわかる。少ない年は2件(1972、1973、1975)から多い年は11件(1996)と幅広い。また、90年代以降に受賞件数が増えている年が多いような印象がある。
そこで、90年代以降を見ると、新聞大会開催地の社が受賞している年が7回(8件)あり、36%の確率で受賞していることがわかる。内訳をみると編集の企画部門が7件、経営・業務部門が1件。2002年以降に絞ればほぼ2年に1回のペースで受賞している。
まあ、これだけのデータで関連性があると言ってしまうのは牽強付会というものだが、開催地となった新聞社では、国体と同じように地元のメンツを重視するトップから「受賞できるようなネタを出せ!」というハッパがかかるのではないだろうか。その結果、気合いを入れて企画および取材をすることになり、他社の応募作に比べ評価の高い記事が作りだされるのではないか、という仮説が成り立つ。ニュース部門(大スクープ)はなかなか狙って出せるものではないだろうから、企画部門に力を注ぐことになるのだろうか。
ちなみに今年の新聞大会は静岡市で開催。ホストとなる静岡新聞社の編集部門候補作は「『石川静岡県知事、辞意表明へ』のスクープ」と「連載企画『浜岡原発の選択』」。さて結果はいかに。