2009年度新聞協会賞の編集部門候補作が出揃う
⇒平成21年度新聞協会賞(Pressnet新聞協会)
新聞・通信・放送各社に勤務するサラリーマン記者にとって最も権威ある賞・新聞協会賞の候補作品が7月14日出揃った。9月2日の選考委員会で受賞作品を決定し、10月15日に静岡市で開かれる新聞大会で授賞式が行われる。
新聞協会賞には編集、技術、経営・業務の3部門があり、編集部門は「ニュース」「写真・映像」「企画」の3つに分かれる。このうち最も華々しいのが「ニュース」であり、いわゆる社会に大きなインパクトを与えたとされる「大スクープ」が候補作として並ぶ。各社が1年間で最も自信ある選りすぐりのニュースを応募しており、それゆえに候補作も厳選されたものとなる。また、社会に大きなインパクトを与えたということに主眼が置かれ、全国的なニュースの比重が高くなるため大手紙の応募が多い。「ニュース部門」は14件に対し「企画」部門は44件。1社の応募件数に制限はない。ちなみに「企画」部門は各社が独自の方針(他社とは基本的にバッティングしないテーマ)で取材した特集・連載記事が提出される。
下記ニュース部門の候補作を眺めてみると、新聞・通信・放送各社がどういったニュースを「スクープ」としてとらえ、評価に値するとみなしているかがわかって興味深い。
- 「障害者団体向け郵便割引制度悪用事件」の特報と関連報道(朝日新聞社)
- 「トヨタ自動車トップ(豊田章男氏)人事」の特報(朝日新聞社)
- 「金正雲氏スイス留学の特報」(毎日新聞東京本社)
- 「農林水産省による組合幹部の『ヤミ専従』隠しに関する一連のスクープ」(読売新聞東京本社)
- 「パナソニックによる三洋電機買収を巡る一連のスクープ」(日本経済新聞社)
- 「足利事件DNA再鑑定結果を検察側が容認 再審開始決定的に」のスクープ(東京新聞)
- 「北朝鮮、テポドン発射準備のスクープ」(産経新聞東京本社)
- 「足利事件DNA型不一致のスクープ」(共同通信社)
- 「核持ち込み密約」のスクープ(共同通信社)
- 「『世界の医療団』赤羽桂子さん解放」のスクープ(時事通信社)
- 「日本漢字能力検定協会を巡る理事長父子による一連の不正」のスクープ(読売新聞社)
- 「出動ミス 市道での車水没死亡事故」のスクープと一連の報道(下野新聞社)
- 「石川静岡県知事、辞意表明へ」のスクープ(静岡新聞社)
- 「損害保険3社が経営統合」のスクープ(日本放送協会)
なお、こちらのページで全応募作の概要を閲覧できる。企画部門のコーナーを見ると、全国各地の新聞社がどのようなテーマに力を入れているかがわかる。中には河北新報の連載企画「漁場が消える――三陸・マグロ危機」や京都新聞の連載企画「命ときめく日に」のように該当企画・連載記事へのリンクを貼っている記事もある。ほとんどの人にとっては初めて読むことになる記事なのだから、応募作品についてはウェブで読めるようにしてもらえると助かるのだが…。「今、地方で何が起こっているか/何に取り組んでいるか」を知る上で意義のあることになると思う。
過去の受賞作はこちらのページで。昨年(2008年度)は「石綿被害 新たに520カ所 厚労省は非公表」のスクープ (ニュース→毎日新聞社)、ミャンマー軍兵士による長井健司さん銃撃の瞬間ビデオ映像(写真・映像→フジテレビジョン)、長期連載企画「揺らぐ安全神話 柏崎刈羽原発」(企画→新潟日報)だった。果たして今年の受賞作は何になるのだろうか。