edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

NHKオンデマンド、利用増加も遠く険しい道のり

 昨年12月に始まったNHKオンデマンド総務省所管の特殊法人が運営しているだけあって、会員数や購入数といったデータをわりとオープンにしており、ネット上でコンテンツ有料配信サービスを考える上での貴重なサンプルといえそう。

 会員登録数と購入実績の資料(PDF)によると、09年5月のPC版会員数(会員登録は無料)は81,461人、うち月額1470円で指定番組を視聴できる「見逃し番組 見放題パック」の契約数は3,813件。コンテンツを単品またはセット購入した件数は、合計18,077件。 会員登録はしても実際にお金を払うのは4分の1強というところだろうか。大河ドラマNHKスペシャルためしてガッテンなど質が高いと言われているコンテンツをもってしてもこの数字、というのは若干寂しい気がする。

 NODは昨年12月のスタート当初、番組購入者を「今年3月に月間8万1000人」と予想(パソコンとテレビの合計)。ところが実際は、3月、4月とも各1万4000人にとどまっている。パソコンでNODを利用するには、無料の会員登録をし、見たい番組を1本105〜315円で選んで購入する(まとめ売りもある)のだが、「会員登録はしても、意外に番組購入のボタンを押してもらえない」(NHKオンデマンド室)という。
 打開策として、NHKは有料の方針を一部転換。5月に連続テレビ小説のヒット作「ちゅらさん」の第1〜6話を、初めて無料とした。これが功を奏したのか、同作品の無料分が5月末までに計約4万回視聴されたほか、7話以降の有料分の視聴も、これまでに2万回以上にのぼっている。ほかにも人気ドラマ「ハゲタカ」「デスパレートな妻たち」を有料で投入するなど、キラーコンテンツでのテコ入れに躍起だ。
 6月4日の会見で、NHKは「手応えを感じる」(福地茂雄会長)、「やっと先行きが見えてきた」(日向英実放送総局長)とアピールしていたものの、予想を大幅に下回っている状況に変わりはない。「購入者が少ないなりに増えてはいますという、開き直った上での見解」(NHK職員)というのが実情のようだ。
 NODは受信料を前提とせず、独立採算で運営。昨年度決算で13億円、今年度予算では16億円を受信料収入から借り入れる形でコストを賄っている。昨年度の予算では4億円の視聴料収入を見込んだが、現実には5000万円にとどまった。平成23年度に単年度黒字、25年度に累損解消を目指しているが、達成はほど遠い。赤字が解消されない場合の道筋は示されておらず、来年度予算にも影響しそうだ。
Expired(産経新聞配信記事)

 6月〜7月にかけて、ウィンブルドン2009の試合や大相撲名古屋場所のハイライトを配信しテコ入れを図っていくもようだが、単月黒字や赤字の解消などはまだまだ遠い先の話。責任問題にも発展するかもしれないような書き方だ。
 しかし、「やっぱり有料のネット配信は駄目だ」「赤字だからやめてしまえ」ということで、インターネット上の動画配信が著作権無視のサイトもしくは権利者からの指摘があってから削除するサイトしか行えないというのは、ネット業界やマスメディアだけでなく日本全体の未来にとって非常に不幸なことだ。
 BSも含め受信料を月々払っている立場からすれば、「見逃しサービス」にも月額1500円近く追加で取られてしまうのは正直納得がいかないものがある。せめて放送後10日間の見逃しサービスについては受信料をきちんと払っている世帯については無料もしくは割引での提供ができないものか。携帯電話会社がやっているように「10年以上払っていれば○○%引き」のような長期契約者への割引などを打ち出せば、「さすがはみなさまのNHK」と少しは見直されると思うのだが。