edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

朝日新聞社の社外監査役に辣腕コンサルタントの冨山和彦氏

 先週号の週刊文春に出ていたのでメモ。「会社は頭から腐る」の著者で、ダイエーやカネボウの事業再生を手がけた冨山和彦氏が朝日新聞社の社外監査役に就任という記事。これまでどちらかというと名誉職的な役割が強かった社外監査役のポストに、第一線の活躍中の経営コンサルタントが就くというのは異例とのこと。

 朝日との出会いについて、経済部OBのジャーナリスト、井上久男氏が語る。「01年ごろ、企業再生を手がける面白い人がいると聞いて冨山さんを取材しました。中国からカネを引っ張ってきて日本企業を再生させるという、当時としては目新しいことを言っていた。話がうまく、面倒見がいい。朝日の経済部デスクから『優秀な経営アドバイザーを知らないか』と言われたので、私が冨山さんを紹介し、そこから経営陣に人脈が出来たようです」(週刊文春2009/6/11)

 事業拡大ではなく合理化によって経営再建を目指すとき、多くの場合苦境に陥った原因と再建のための課題は見えているのだが、それを解決するための過程に大きなハードルがあるというケースが多い。おそらく現役で活躍中の冨山氏を招聘したのは、氏の現場経験を買い、そのハードルを乗り越えていくことを目的としているのではないだろうか。

 産業再生機構で支援した企業にカネボウがあった。
 同社は、かつて日本の民間企業の中でも最も大きい会社であった。しかし、経営戦略の合理から見ると、もはや赤字部門となった「繊維事業」を切り離すことが何よりも必要であった。
 ここで問題だったのが、カネボウにとって繊維事業が「祖業」であったということである。カネボウの経営トップは、繊維事業を自ら祖先の「祖」という字を当て「祖業」と称し、先祖代々の家業のように位置づけていたのだ。
 繊維事業からの撤退は、他の事業に経営資源を集中させることである。合理で考えれば極めて真っ当な選択だが、かつてこの繊維部門で育ち「愛着」を抱く多くのカネボウ社員たちにとっても、シビアな判断である。つまり「繊維事業」からの撤退とはすなわち、繊維部門の社員に「すみません、ここから半分の人たちはムラから出ていってください」というに等しいのだ。
 この判断が、同じ釜の飯を食ってきた、いわば身内同然の社員に対してできるかどうか? これは情理を伴う人間にとって、相当ハードルが高い。
Not Found|ダイヤモンド・オンライン(Diamond Online)|ダイヤモンド社の総合ビジネス情報サイト

 朝日新聞社のように大きい会社であれば、カネボウ同様「切り離す」べき「祖業」に値するものが山のようにあるのだろう。そこをどのように乗り越えていくのか、注目したい。下記の例などもその一つだろうか。

 秋山社長は年頭に2010年5000人、12年4500人へと思いきった人員圧縮を表明しているものの、一部では「高コスト構造の最大の元凶とされている給与削減にも切り込むべき」との声もくすぶる。
 その点で注目されているのが、慢性的な赤字体質からの脱却を促す目的で昨年4月に分社化された出版子会社、朝日新聞出版で持ち上がった組合問題。およそ150人の社員のうち100人が待遇改善を求めて、新労組「朝日新聞出版労組」を立ち上げたもので、分社化以降に採用された社員と、分社化前から在籍する本体からの出向組との賃金格差解消を経営側に働きかけている。
 しかし、経営側からすれば分社化以降に採用された社員の待遇改善よりも、出向組の労働条件を切り下げる形で格差を解消したいというのが本音。新労組結成をむしろ逆手にとって、それに踏み切れるか。「朝日の今後を占う試金石になる」(業界筋)というわけだが、結末やいかに――。
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