edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

共同通信、熊本地震でドローン活用 被災状況を低空映像で描写

 熊本地震共同通信が小型無人機「ドローン」を活用し、被災地の空撮映像の撮影と公開を行っている。最初の震度7が発生した翌日の4月15日にはYoutubeの共同通信公式チャンネルに「熊本地震1000人負傷 死者9人、余震続く-ドローンで撮影」をアップ。5日間で26万回以上視聴された。

 また、4月17日には「土砂崩れで阿蘇大橋崩落 熊本、全半壊1700棟超」と「文化財も大きな被害 阿蘇神社『楼門』倒壊」をアップ。映像は加盟社である毎日新聞中日新聞北海道新聞などのニュースサイトの動画コーナーでも見られるようになっている。

 動画を視聴すると、震度7が直撃した益城町の全壊した家屋や屋根にブルーシートが並ぶ被害状況が目の前に迫る。あるいは土砂崩れによって端から端まで完全に崩落した阿蘇大橋、大きくえぐられた山肌の様子、大きな被害を受けた貴重な文化財の様子が非常によく分かる。音声のないシーンが多く静寂がかえって不気味だが、映像自体は手ブレもなく非常にスムーズだ。これまで報道機関の活用例としては観光地の風景やイベントなどでの撮影が多かったドローン空撮も、いよいよ過酷な状況下である災害報道の現場でも使われるようになった。

 なお、昨年の首相官邸ドローン事件を受けて航空法が改正され、「住宅密集地は飛行禁止」「夜間・目視外飛行は禁止」といった規制がかかることになったが、国土交通省航空局に申請し許可承認を得ることで飛行は可能になる。

[参考]⇒航空:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール - 国土交通省

 上記のページには飛行ルールや許可が必要となる空域や飛行の方法に加え、これまで許可承認を受けた事業者のリスト(PDF)があり、調べたところ共同通信は昨年12月17日に報道機関としてはNHKに次ぐ早さで承認を受け、「人口密集地区の上空」「夜間飛行」「上空30メートル以内の飛行」について今年いっぱいの期限で許可を受けている。使用機材はDJIのPhantom3だった。この件は2015年2月15日付の業界紙ジャーナリスト新聞で記事になっており、「危険性を軽減するためプロペラガードやパラシュートを追加装備するほか、飛行監視補助者の配置が義務付けられた」とのこと。審査の基準については国交省のサイト内で閲覧可能だ。

[参考]⇒無人航空機に係る許可承認の内容 平成27年度 【本省航空局担当関係】(PDF)
[参考]⇒無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(PDF)

 リストをさらっと眺めたところ、新聞社では山形新聞、読売新聞、北海道新聞長崎新聞十勝毎日新聞産経新聞静岡新聞佐賀新聞が見つかった。使用機材は共同通信と同様DJIのPhantom2または3がほとんどで、社によってどの地域および区分で許可を得たかは異なっている。また、放送局では申請番号1番のNHKを筆頭にフジテレビ、北海道テレビテレビ西日本日本テレビCBCテレビなどが許可を受けている。

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熊本地震、熊日・西日本・毎日が生活情報発信 避難所ごとの取材状況も掲載

 4月14日から熊本県を中心に頻発する地震震度5以上の大地震が続き、終息する気配が見えず避難生活の長期化も予想される中、全国紙や地元紙などの新聞社も紙面だけでなくウェブサイトで積極的な情報発信を続けている。

生活関連情報充実、Facebookページ活用 熊本日日新聞

 まずは地元県紙の熊本日日新聞は、Facebookページ上で「熊日ライフライン・災害速報」を随時発信。水道や鉄道の復旧見込みを速報したり、被災者や熊本への応援メッセージの募集を行っている。また、自社ニュースサイト「くまにちコム」に「生活関連情報」として下記の情報を掲載。市町村別に給水や物資の支給といった支援情報や、ごみの収集状況や主要病院の診療状況、さすが地元県紙だけあり、県内の各市町村別に細かな情報を掲載している。ただ、紙面に掲載されたものを転載しているとのことで、基本的に前日までに入手できた情報と考えた方が良さそうだ。

 少し気になったのは自社ニュースサイト内の「ライフライン情報」のページ。4月15日の時点ではテキスト主体で情報が掲載されており、従来型携帯電話を含めて閲覧しやすかったが、ある時点からFacebookページのウィジェットで構成されるようになり、スマートフォンなどで閲覧しづらくなってしまった。入力をFacebookページに一元化し運用の効率化を図ったのだろうが、これなら素直に直接Facebookページにリンクした方が良いのではと思ってしまった。

避難所単位で記者による取材情報を発信 西日本新聞

 福岡を中心とした九州のブロック紙である西日本新聞は、ニュースサイト内に「熊本地震 避難所情報」を開設。西日本新聞の記者が取材した避難所状況をまとめて発信している。大きな特徴は市町村別のページの多くで【○○公民館】【××小学校】のように、細かな避難所単位で現状で困っていることや必要な物資などの情報を発信していること。「支援物資は全く来ない」「風呂使えず紙パンツとウェットティッシュでしのいでいる」「看護師、介護士の応援を早く」など、現場からの生の声が数多く掲載されている。1日に何度も更新されており、紙面の締め切りとは関係なく情報がアップデートされている。

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情報のジャンル分類に見やすさ 毎日新聞

全国紙の毎日新聞はニュースサイト内に「熊本地震ライフライン」のコーナーを開設。病院/生活関連/避難所/入浴/郵便・宅配/電気・水道・通信・ガス/通信/交通などジャンルに分かれて情報がまとまっている。「避難所のトイレの作り方」といった記事や、「お年寄りの体調管理Q&A」など、長期化する避難生活に備えた記事も盛り込まれるようになってきた。

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読売新聞、震災5年特集で360度動画を活用 被災地の今をVR体験

 読売新聞は東日本大震災から5年となる3月11日の1カ月前の2月11日、「震災5年〜再生の歩み」という特集コーナーを公開した。パソコン、スマートフォンなどで利用できる。

震災5年〜再生の歩み 航空写真と360度動画で知る東日本大震災からの5年間と現在 : 読売新聞
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 福島・南相馬から岩手・宮古までの被災地12カ所について、震災発生の2011年3月から2016年2月まで定点撮影した航空写真と、記者が360度撮影可能なカメラを持ち、被災地の現状について現地の方からガイドを受ける様子を撮影した動画によって構成される大型企画。VR(バーチャルリアリティ)コンテンツである360度動画で被災地の今を見つめ、再生の歩みを振り返ることができるようになっている。

 コンテンツの柱である360度動画では、例えば観光客を被災地を案内する南三陸町の「語り部バス」のツアーに同行する様子や、釜石市宿泊客が震災当日に避難した裏山に登った様子などを視聴できる。再生しながら動画プレーヤー部分を指やマウスで動かすことで自由に回転させることが可能で、撮影している記者ももちろん映りこんでいる。好きな方向を見ながらガイドの方の説明も同時に聞くことができるので、これまでの平面的な写真や動画よりも自分が「その場」にいるような感覚を味わうことができ、コンテンツへ没入感がより深い。

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 もう一つの柱である航空写真ではおおむね2011年3月から翌年2012年3月までは1カ月ずつ、それ以降は半年ごとに定点撮影した写真をスムーズな操作で閲覧することができる。撮影写真の微妙な差については、国土交通省の海岸線データと組み合わせることで、写真を切り替える際にズレを埋めるような配慮がされている。また、スマートフォンで写真の部分をタッチ(PCではマウスのボタンをドラッグ)することで、震災直後の写真と現在の写真の同じ場所を比較することができる。細かなところまで制作者のこだわりを感じさせるものであり、コンテンツとしての完成度は非常に高い。

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朝日新聞、平均年収160万円減少へ 大盤振る舞いの早期退職制度を復活

 年始の社長あいさつで「人件費100億円抑制へ」という方針を打ち出した朝日新聞だが、その方針を裏付ける具体的な内容が先週発売された週刊新潮(1月28日号)に掲載された。以下に該当部分を引用する。

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週刊新潮2016年1月28日号より)

 <今回の給与制度改革は、給与水準の抑制を伴い、みなさんにとって大変厳しい提案にならざるをえませんでした。(中略)平均年収は16年対比で約160万円減少する見込みです>
 会社から一方的に通知された衝撃の給与削減案だった。組合と協議の上、来年4月からの移行を目指すというが、改定例によれば年収の削減幅は基本的に対象年齢の上昇とともに大きくなる。例えば30歳なら年収は平均で88万円削減され786万円に。40歳の場合、マイナス額は192万円となり、削減後の年収は1053万円である。
 まだまだ高水準とはいえ、朝日社員のプライドを打ち砕く改革案には違いない。また、今回朝日が進めようとしているリストラはこれだけではない。昨年11月末朝日の組合員の元に届けられた機関紙には、次のような見出しが躍っていた。
 <早期退職 40歳以上で募集>
 <年収40%×最大10年分を一括支給>
 募集は今年1月12日からと5月9日からの2回に分けて行われるという。「新年会でも早期退職制度が話題になりました。我々40代だとだいたい5000万円は貰えるそうです。そのお金は老後に取っておいて、別の仕事を探すの悪くないかなって思い始めています」(地方支局の社員)
週刊新潮2016/1/28号「『年収160万円削減』『早期退職募集』でも先が見えない『朝日新聞』の落日」より)

 人件費100億円抑制を単純に会社概要に記載されている2015/4/1時点の朝日新聞の社員数4,597人で割ると217万円となる。平均160万円の年収減と新卒採用の絞り込みや早期退職制度による人員削減を合わせて100億円の抑制を目指すものと考えられる。2015/6/25に提出された有価証券報告書によると平均年収は1237万円とあるので、約13%の大幅な減少となる。最終的には労使交渉次第ということになるが、多少緩和されたとしても相当な内容になることは間違いない。30歳で88万、40歳で192万ということだから、50歳以上なら相当な額となってくるだろう。

 また、早期退職者に年収40%を10年分支給する制度の運用も始まっているとのこと。朝日新聞はすでに2010年夏に退職金とは別に年収の半分を10年分支給する早期退職制度を実施している。今回は半分から4割に下がったものの、例えば40歳ならば減少前の平均1245万×0.4×10=4980万円が支給される。大盤振る舞いといえるリストラ策の復活となる。

 “朝日新聞記者有志”が2015年1月に文藝春秋から出版した社内事情の暴露本「朝日新聞 日本型組織の崩壊」によれば、2010年当時110人を超す社員がこの制度を利用して退職した。学生時代から作家としても知られ、朝日では東京本社編集局長まで務めた外岡秀俊氏や、テレビ番組「サンデープロジェクト」のコメンテーターで雑誌「論座*1」の元編集長・薬師寺克行氏、書評欄の編集長として文学や読書の記事を支えてきた佐久間文子氏など、著名な記者が何人も去ったとのこと。書籍では社内の様子が次のように綴られている。

 当時は秋山社長自身、「もう少し会社に残って、活躍していただきたい人も少なからず含まれています」と、社内ポータルサイトで苦しい胸の内を明かしていた。転身支援を受ける資格があった中高年の多くの社員が、手を上げるべきか悩んでいた。それほどに、会社の将来性がおぼつかなく感じていたのだ。
 「これほどの優遇策は二度とない。次の機会には否応なくリストラされるかもしれないからね」と吐露した40代後半社員のさびしい表情が忘れられない。
 結局のところ、独力で生きていく実力や自信のある人ほど、沈んでいく“泥船”からいち早く逃げ出し、会社が“重荷”として感じるような人は反対に、社の待遇や肩書にしがみつこうとする、“ありがちな展開”が繰り広げられたのだった。
(文春新書「朝日新聞 日本型雇用システムの崩壊」p.221より)

朝日新聞 日本型組織の崩壊 (文春新書)

朝日新聞 日本型組織の崩壊 (文春新書)

 結果的に二度目はあったわけだが、おそらく今回も多くの社員が退職することになるのだろう。起業の仕組みは整ってきているし、NPOによる事業をビジネスとしていく道も広がっている。また、2010年と比較してネットメディアの成長も著しく、デジタルの世界で引き続き記者として力を発揮できるフィールドも少なくはない。

 また、「社員OBの無料購読廃止」についても週刊新潮に掲載された。今年3月末で社員OBへの無料購読を打ち切り、4月からの購読を求める手紙が送られたとのこと。

[参考]⇒朝日新聞がOB6千人に送ったムゴい「寒中見舞い」 | デイリー新潮

*1:現在は休刊しウェブ媒体webronzaへ移行

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地方紙で進む入選者の名簿検索 福井は書き初め、新潟日報は美術展で

 福井新聞社は21日、第80回県かきぞめ競書大会1次審査結果(特選者名簿)を、電子新聞「福井新聞D刊」の速報サイト「fast(ファスト)」に掲載する。3千人を超える1次審査通過者(特選者)を「学校名」「学年」で絞り込み検索できる。
 公開は同日午後2時ごろを予定。22日付の紙面に先駆けパソコンやスマートフォンタブレットなどで閲覧することができる。結果速報は1次審査のみ。
 「D刊」「fast」(ともに有料)の購読申し込みはD刊トップページ(http://dkan.fukuishimbun.co.jp)から。問い合わせは福井新聞コールセンター=電話0570(088)291。
特選決まる、福井県かきぞめ競書 福井新聞D刊で紙面に先駆け発表 催し・文化 |福井新聞ONLINE

 福井新聞は1月21日、応募総数が6万7千を超える「第80回福井県かきぞめ競書大会」の1次審査の結果をインターネットで検索できるサービスを公開した。電子新聞「福井新聞D刊」のコンテンツで、ニュース速報を提供する「福井新聞fast(ファスト)」上で利用できる。

 このかきぞめ展は、福井県の小学1年生から大学生までを対象に書道作品を募集するもので、今年は6万6788点の応募があり、特選(1次審査通過)3510点、秀作1万203点、入選2万120点が選ばれた。特選である1次審査の通過者は22日付の福井新聞紙面に掲載されるが、電子版の有料会員はそれよりも1日早く学年、学校名、地区を指定して検索できる。1次審査の通過者だけでも3千人が掲載されることになるため、紙面から探す手間を軽減できる。

福井新聞D刊

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 また、新潟日報は昨年12月、こちらも応募総数が3万2千を超える「第46回県ジュニア美術展覧会」の審査結果を、新潟日報読者を対象にした会員制ウェブサイト「新潟日報モア」の中で検索できるようにした。この美術展は幼稚園・保育園から中学生までを対象にしており、絵画や版画など平面作品の総合作品展。学年および地区を指定することで、特賞30点、優秀賞190点、奨励賞1840点の入賞者を検索することができる。また、特賞の作品については検索結果またはギャラリー形式で画像を閲覧することも可能となっている。

2015 県ジュニア展|新潟日報モア

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日経電子版、デジタル単独購読比率55%に 有料会員は約45万

日本経済新聞社は16日、2015年12月の「日本経済新聞」朝刊販売部数(日本ABC協会公査)と16年1月4日時点の「電子版」会員数を公表しました。日本経済新聞では半年ごとに最新の部数、会員数をお知らせしています。

日本経済新聞・電子版購読数合計 318万2315
日本経済新聞朝刊販売部 273万2604
電子版有料会員数 44万9711
うち新聞と併読除く電子版単体 24万7505
無料登録会員を含む電子版会員数 297万3070

(2016年1月17日 日本経済新聞朝刊39面より)

 2012年7月以来、半年ごとにその時点の朝刊購読部数と電子版の会員数を公表する日経が、1月17日朝刊紙面およびウェブサイト(PC版トップページの右メニュー中段)で最新の購読状況を公開した。それによると電子版の有料会員数はほぼ45万で、無料会員を含んだ会員数全体が297万と300万に迫る数字となっている。朝刊部数はゆるやかな減少傾向だが電子版有料会員は着実に増加しており、朝刊部数と電子版有料会員の合計である購読数の数字をキープ。朝刊部数とデジタル版単独を合計した純粋な読者数は297万7千となっている。3年半で朝刊部数は約24万部(8%)のマイナスだが、有料会員・会員総数ともに2倍以上の伸びとなっており、電子版の需要が年を追うごとに増加していることを示している。

 このペースでいけば来年(2017年)初頭には有料会員50万人を突破しそうな勢いだ。昨年11月30日に買収を完了したFTの電子版有料購読数がその時点で50万4千とのことなので、日本語単独のマーケットを対象にした有料ニュースコンテンツとしては驚異的な数字だ。
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 また、紙面との併読(Wプラン)を除く電子版単体の会員数は24万7500で、有料会員に占める割合は55%となった。2012年7月以降の推移をグラフ化すると以下のようになる。2012年7月の45.5%から毎年じわじわ増え、3年半で9.5ポイント上昇した。併読と単独の比率が逆転したのは2014年1月の発表時だが、その後もほぼ同じペースで増加している。少なくとも日経電子版に関しては、紙を必要としないユーザーが多数派になりつつあると言えそうだ。

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朝日新聞、地域面などの編集・校閲業務を4月に分社化 人件費100億円削減へ

 今年4月に予定されている朝日新聞の編集部門の一部分社化。2014年2015年と過去2年間の社長の新年あいさつでも説明されてきたが、かなり具体的な内容が業界紙による新年号の業界トップインタビューで明らかになった。以下、1月2日の新聞情報に掲載された該当部分を引用する。なお、記事全文を含めた紙面は「新聞オンライン.COM」で525円で購入することが可能だ。

[購入先]⇒2016年1月2日 - 電子版新聞の販売・購読ポータルサイト - 新聞オンライン.COM

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――4月から編集部門を分社化すると聞いていますが、対象や目的を教えて下さい。


渡辺社長 当面、やろうとしているのは地域面とフィーチャー面*1の校閲と編集です。フィーチャー関係を中心とした写真やデザインも移そうと思っています。
 全社で毎年70人から80人の採用を維持していても、なかなか写真やデザイン、校閲の記者を潤沢に採用していくことが難しくなってきていて、次の世代に伝えていくことが困難になってきていることが狙いの一つです。朝日新聞は写真やデザイン、校閲にしても、他社から評価されています。これを一定のボリュームで伝えていくためには新社で新たに採用していく方がより効率的だろうというのが一つ。もう一つは別会社にして外と連携することによって、別の才能を持った人が入りやすくなることを期待しています。
 また、新社として事業をすることも狙っています。朝日新聞社の校閲部門朝日新聞の校閲をするわけですが、新社の校閲は朝日新聞の校閲もするけど、他社の校閲を預かってもいいわけです。それがビジネスとして成り立つなら、校閲の人をもっと採用すればいいわけですから。


――新社は子会社の朝日マリオン21を利用すると聞きました。


渡辺社長 マリオンはもともと、そういう意図を持って作った組織なのですが、ちょっと特化しているところがあるので、これを土台にして違う機能を入れていく考えです。


――人員規模はどれくらいでしょうか。


渡辺社長 本体からの出向者は数十人規模でスタートすることになりそうです。
(2016年1月1日付新聞情報 「朝日新聞社 渡辺雅隆社長に聞く」より)

 整理すると「分社化の対象になるのは地域面とフィーチャー面の編集(レイアウト)と校閲」「新会社は子会社の朝日マリオン21を利用」「出向者は数十名でスタート」となる*2。当初はもう少し早く行われる予定だったが、2014年の「吉田調書」「吉田証言」「池上コラム不掲載問題」一連の問題を受け、この時期になったようだ*3

 朝日マリオン21は会社案内によると2006年に設立された朝日新聞社全額出資の編集・情報発信サービス会社で、東京本社のマリオン編集部が独立して業務を開始。夕刊の生活情報面*4の編集・制作をはじめ、朝日新聞の各種別刷り特集、広告特集の編集、各種大学・企業小冊子の発行も手がけている。また、朝日新聞社が主催する吹奏楽合唱コンクールやスポーツ事業など全国大会の取材・記事化も行っている。この会社に新たに地域面とフィーチャー面の編集と校閲業務を委託することになるのだろう。

(追記:2016/4/20 朝日マリオン21は、4月1日付けで社名を「朝日新聞メディアプロダクション(略称:Aプロ社)」に変更した)

 編集部門の分社化は他社でもあり、産経新聞2013年10月に「産経編集センター」を設立し、校閲部門を全面的に移管した。また、読売新聞も徐々に子会社の読売プラスに移管している。下記の転職情報サイトの求人案内(1月11日募集終了)によると、2014年4月から業務委託が始まり、2015年12月現在で東京本社のベテラン校閲記者9人を出向させ、計40名体制で東日本23都道県の地域面の校閲作業を行っている。今後は東京本社の地域面の校閲業務を全て委託すべくさらに子会社の組織を整備中とのことだ。

[参考]⇒読売新聞 地域面の校閲者★1年後をめどに、一定水準到達で正社員登用|株式会社読売プラスの転職・求人情報|エン転職

*1:1面や社会面、運動面などの「ニュース面」に対して、学芸面や生活面、科学面などを指す言葉

*2:なお、情報誌FACTAによると出向は春と秋の2段階で、最終的には160~170人ほどの社員が新会社に移るとしている

*3:参考:「信頼回復と再生のための委員会」第1回会合(2014年10月18日)主なやりとりの最終部分に「編集新社の設立については組合に提示しました。した時点で止まっていて。しかし今、編集の現場はそれどころではないので、半年延ばしましょうということも社長が組合に表明しています」という社側の発言がある

*4:身近なイベント・レジャー・プレゼント情報を掲載する面

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